例えば、引力や遠心力のような物理的な力の場合は、そのような力そのものが存在していると想像しやすいのですが、記憶力や理解力はちょっと立ち止まって考えれば、そのような力そのものが存在しているとは考え難くなると思います。まして、権力や人間関係の圧力などというのは、実体がないのは明白ではないでしょうか。
実は、物理的な力も同様です。例えば、引力はニュートンがりんごが木から落ちるのを見て発見したとよく言われていますが、ニュートンが見たのは「りんごが木から落ちる」という現象であって、引力そのものではありません。
第四章で言及したように、『力』とは何らかの現象として現れた『働き』のことです。だから、「○○力」という力そのものは本来なく、私たちが「○○力」と呼んでいる現象が生じているだけなのです。