一つだけよく覚えているのが、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」です。

 死んで地獄に落とされた罪人のかん陀多が、生前、踏み潰そうとした蜘蛛を助けていたことから、お釈迦様が蜘蛛の糸を垂らしてかん陀多を地獄から救い出そうとします。でもかん陀多は、自分の後からたくさんの人が蜘蛛の糸を上って来るのを見て、蜘蛛の糸が切れてしまうと思い、この蜘蛛の糸は自分のものだから他の者は下りろと叫びます。すると蜘蛛の糸が自分の上で切れてしまい、結局自分もまた地獄に落ちてしまうという話でした。

 この話は、自分だけ助かれば他の人は地獄に落ちても構わないという無慈悲の心を戒める話ですが、それだけではなく、「一寸の蚊にも五分の魂」という諺もあるように、蜘蛛のような小さな虫にもちゃんと命があるのだよということも教えてくれました。この話を聞いてからの私は、間違って虫を踏み潰しては大変だと思い、いつも下を向いて歩いていました。(世間では坂本九の「上を向いて歩こう」が流行していましたが、私は「上を向いて歩いていたら虫を踏んづけてしまうよ。」と思っていました。^^;)また、蟻のような虫を見つけると、踏まないようにと、遠回りでよけて歩いたりしていました。あの頃は素直だったのですね。(^_^)

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