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2003/10/17

24.トキよ永遠に

 皆さんこんにちは。『Dr.0910』です。

 平成15年10月10日午前7時20分、最後の日本産の鴇(トキ)『キン』がとうとう逝ってしまいました。この瞬間、トキの日本産野生種は、永遠に地上から消え去りました。

 トキは、江戸時代には日本のいたるところにいるありふれた鳥だったそうです。それが明治時代に、羽根布団用や食用にと乱獲され、大正時代にはすでに絶滅しかかっていたそうです。昭和初期にはすでに数百羽になっていました。それでも十分な保護を行わず、戦後は、農薬汚染による餌の減少や生殖能力の低下、開発によるすみかの破壊によりトキを絶滅へと追いやったのです。

 過去にアメリカ合衆国で、トキと同様のことがありました。1914年9月1日午後1時、最後のリョコウバトである『マーサ』が亡くなりました。かつてはアメリカ大陸に50億羽もいたと伝えられ、リョコウバトの大群は空を埋め尽くすほどだったそうです。しかし、新大陸に移住した人間たちが乱獲に乱獲を重ね、すみかをも奪って、絶滅へと追いやってしまったのです。私たちはリョコウバトと同じことを日本のトキに対して行ってしまったのです。

 皆さん、トキの学名をご存知でしょうか?

 『Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)』と言うのです。そうなのです。トキは、日本の名前を冠し、日本を象徴する鳥なのです。そんなトキを私たち日本人が自ら絶滅させてしまったと言うのは、なんと悲しいことでしょうか。

 私は、まさか自分の一生のうちに種の絶滅に遭遇するとは夢にも思いませんでした。永遠に取り返しのつかないことをしてしまった。私たちは何をやっているのでしょうか。

 このことは教訓として、私たちの胸に深く刻んで置きましょう。私たちが直接トキを絶滅させたわけではなく、昔の人たちの行った行為の為かもしれません。でも、私たちはそういう先祖の歴史を受け継いで生きている身です。私たちの存在はそのようなことも含めてご先祖の歴史の上に成り立っているのです。誰の責任かは問題ではありません。過去の過ちは過ちとして認め、それを教訓として、自分自身はどう生きるかが大切なのです。そうしなければ、私たちの社会は良くなっていくことはありません。

 『キン』の年齢は、推定36歳で、人間にすると100歳を超える年齢だったそうです。トキの寿命は、野生では十数年、人工飼育で長くても30年だそうで、『キン』の年齢は驚異的な長寿であり、もちろん世界一だったそうです。最後のリョコウバト『マーサ』も29歳と、ハトとしては異常なほどの長寿でした。

 なぜ『キン』『マーサ』もそんなに長く生きられたのでしょうか?

 かごの中で手厚い保護を受けていたからでしょうか?

 私はそうではないと思うのです。私はたくさんの人々の思いがあったからだと思うのです。『マーサ』は動物園にいましたから、たくさんの人々が励ましに来て、励ましの手紙も全米から届いたと言います。『キン』もたくさんの人々の保護と励ましの中で生きていたのです。

 『純粋な思いは通じる』のではないでしょうか。

 “通じる”と言うのは必ずしも実現すると言うことではないかもしれませんが、“(何らかの)影響を及ぼす”と考えることはできると思います。

 「思いだけで世の中変わるわけがない」と考えてしまいがちですが、それは行動を起こせない意志の弱さを隠す為の言い訳にしか過ぎません。私たちが行動を起こすときにはまず『思い』が必要なのです。どうしても行動まで踏み切れないときでも、決して『思い』を捨てないで置きましょう。

 『どんな命もないがしろにされることなく、みんなが幸福で、平和に暮らせる世の中にしよう』という思いは、皆さん、決して捨てないで、いつも心に持ち続けましょう。

平成15年10月17日

Dr.0910

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