でもそれだけでは済まされないのです。いわゆる大人たちは外見で子供たちを判断しますから、やっぱり“いい子”になってほしいのです。子供たちはそんないわゆる大人たちの身勝手な期待と、それとは正反対な自分の心の中のリアルな現実との狭間で汲々としながらも、何とか必死にガラス細工のような自分自身を保っているのです。それが現代の子供たちの姿なのです。だから子供たちはとても疲れているはずです。なにも、教科書に載っている学習量が多いからではありません。週に六日間、学校に行っていたからでもありません。子供たちの心の中ではとても大きなエネルギーを消費するような大変ストレスフルな現実があるということです。覚える知識の量を極端に減らさなければならないほど、子供たちの心に余裕がないということです。そのような子供たちの心の現実を思い量ることなくして、“ゆとり教育”などというものは絶対にあり得ません。
ゆとりを感ずるのは心ですから、ゆとりというのは“心のゆとり”のことなのです。そして、それは、これまでのお話しでお分かりと思いますが、『心のエネルギーのゆとり』なのです。ただ余暇の時間を多くしたり、建物の中の空き空間を大きくしても、そのことが直接的に子供たちのゆとりになることはありません。教育者の方々が“ゆとり教育”を標榜するのなら、子供たちの心に本当のゆとりをもたらすことを真剣に考え、実行していただきたいと思います。なぜなら、そのことこそが“真の”教育になると思うからです。