先の核分裂の式をもう一度見てみると、1個の ウラン235 原子が核分裂をおこすと、3個の中性子が発生することがわかります。

U235 + n → Ba144 + Kr89 + 3n

 この新たに発生した中性子が周囲の ウラン235 原子に吸収されれば、ウラン235 がある限り連鎖反応的に核分裂は続いていくだろう事は推測がつくと思います。しかし、自然界に存在するウランのほとんどは ウラン238 で、ウラン235 はたった 0.7% しか含まれておらず、核分裂によって放出される高速中性子線のほとんどは、周囲の ウラン235 を突き抜けて ウラン238 に吸収されてしまい核分裂は継続しません。

 ところが、ウラン235 を濃縮して濃度を高めると ウラン235 に吸収される中性子の数が増加していきます。そして、ある濃度に達すると1個の ウラン235 原子の核分裂により生じた中性子のうち1個が、別の ウラン235 原子に核分裂を起こすことができるようになり、核分裂が連鎖反応的に継続していくようになります。このような状態を「臨界(状態)」と言います。原子力発電所は核分裂を臨界状態に保つようにコントロールすることにより、一定の出力を得ているのです。

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