大学に入りたての頃、私は心理学に対して何の興味もありませんでした。「心理学」という名称が堅苦しく思えたのでしょう。中身を知ろうともしないで、避けていました。興味がなくても単位は取らなければなりませんから、講義には出席していましたが、ほとんど寝ていました。試験があるのですが、ノート持ち込みでしたから楽勝だと高を括っていたのです。心理学の講義は一年間で、前期と後期の二期に分かれていて、各々の期末に試験がありました。前期は試験前に“できる”奴のノートをコピーさせてもらい、それで直前に勉強して臨みました。試験結果はわざわざ教授のところまで行って、直々に結果を教えてもらうのですが、同じノートのコピーで勉強した仲間と一緒に結果を聞きに行きました。すると、他の連中は70点台で、みんな同じところを間違えていました。(みんな同じノートのコピーを使ってやっつけで勉強したのですから当然でしょう。(^_^;))当然私も同じだと思ったのですが、最後に告げられた私の結果は、何と100点でした。みんなが間違えたところをなぜか私はそこだけ自分のノートを参考にして書いた為、間違わなかったのです。多分、私が講義中いつも寝ていたことを教授は知っていたのでしょう。とても不審そうな表情で私を見ていました。私も他人のふんどしで相撲を取って100点満点なんて本意ではありませんでした。その時、私の心は決まりました。「後期は絶対実力で100点を取ってやる!」と。それで後期は毎回真剣にノートを取り、図書館に通ってはノートの補充をし、ノートを完璧に仕上げました。後期の試験では点数を教えてはもらえなかったのですが、手ごたえはありました。最終評価は当然「A」でした。
最初は意地になって試験で100点を取る為だけに一生懸命心理学を勉強していたのですが、まじめに勉強しているうちに、いつの間にか心理学が面白くなっていました。そして、それまで私は心というものを意識したことはありませんでしたが、この時の勉強を通して、いつの間にか自然に「心」というものを意識するようになっていました。