そして、お姉さんは車内販売のカートを座席側に向かって押し進め始めました。カートの進行方向にも人がぎゅうぎゅう詰めになっていますから、カートの周囲のみんなが少しずつ詰め合って、カートの前にスペースを作り、ほんとに少しずつ少しずつカートが進んで行きました。カートとお姉さんが完全にデッキから出て行くまで、一体どのくらい時間がかかったかわかりません。多分、小一時間かかったのではないかと思います。その間、ほんとに辛かったです。ぎゅうぎゅう詰めの状態で、電車は揺れますし、車内販売のお姉さんは「前をあけて下さい。」などと、大きな声で叫んでいますし(このお姉さん、絶対に「すみません」とは言いませんでした。ずっと強気のままでした‥。(ーー;))、圧迫感と重苦感と騒々しさで、ほんとに参ってしまいました。
車内販売のお姉さんが座席側に移動し、デッキから完全にいなくなって、やっと静かになり、デッキの人ごみもわずかに緩和され、ほっとできるようになりました。そしてどれくらいの時間が経ったでしょうか、私はトイレの入り口の横の壁にもたれながら、ぼーっとしていました。足はすでにだるくなっていました。すると、突然、髪の毛が引っ張られたように感じました。私の髪は直毛で硬く、壁の継ぎ目などによく引っかかって抜けることがありました。ですから、その時も、「またやったか。」と思い、頭に手を当てながら後ろを振り向いて、もたれかかっていた壁を見てみました。しかし、その壁は、継ぎ目はおろか、髪の毛が引っかかりそうな所など全く無い、平面の壁でした。私は「あれっ、今、確かに髪の毛が引っ張られたのに、おかしいなあ。」と思い、キョロキョロして、髪の毛が引っかかりそうな所を探しましたが、何もありませんでした。しばらく髪の毛が引っ張られた理由を考えていましたが、考えても答えは見つかりませんでした。