「脳」と「心」については、これまでに第二章と第三章でお話ししました。第二章の終わりで、「自分」というのは「心」という内的な存在であるとし、第三章で、その「心」は「脳」の働きではないということをお話ししました。しかし、ちょっと尻切れトンボのような終わり方だった為、何か釈然としないものが残ってしまった方がいらっしゃるかも知れません。それはおそらく、“じゃあ、脳というのは一体何なんだ?”ということをお話ししなかったからではないかと思います。
私は、第二章の終わりで少しお話ししましたように、「まず内的な自分である『心』が存在し、その自分を外であるこの現象界に表現する為の窓口として脳が機能している」と、以前から考えていました。この考えは今でも変わらないのですが、脳には別の側面もあるのではないかとも思っていました。
それは、人間の脳単独の働きとしては、外界に対して反応するだけなのではないかということです。このことは裏を返せば、外界からの入力がなければ、脳単独では何の働きも為さないということになり、機能的には格段に高度ですが、基本原理はコンピュータと同じだということになります。