ここで、人間の行動に関する現代心理学の解釈をもう一度再確認してみたいと思います。現代心理学では、「快−不快」という一つの尺度を感情に当てはめ、「快」感情を生じる対象に向かって人は行動を起こし、「不快」感情を生じるものには回避行動を起こすというものでした。私は、これは動物実験から得た考えだと理解しています。人間も動物である以上は動物的な本能なり基本的な欲求を当然持っているわけで、そのような行動をとることもあると思います。特に、「生存」という生きることの最も基本においては、そのような行動が重要になると思います。しかし、人間である以上、そのような行動がすべてであるということは絶対にないはずです。人間が人間である所以はそのような動物的なところを凌駕する行動にあると、私は思っています。それが『意志』です。意志に基づいた行動とは、自らの内側から湧き上がってきたエネルギーの発露であり、主体的な行動です。私はこの『主体性』が人間を人間たらしめていると思っているのです。だから、私は“人間の”行動は大なり小なり意志に基づいた行動の積み重ねだと認識しています。(実は、「痴呆に学ぶ人間の話」は、この「主体性」を根底のテーマとしています。読まれていらっしゃらない方は、どうぞお時間のある時にご一読していただければ幸いです。)

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