エントロピーとは何かについては、厳密なお話しはできませんが、先の熱力学の第2法則の例からは「均一さの度合い」というふうに考えれば理解しやすいのではないでしょうか。熱は不均一さが解消され、均一化する方向に状態が変化するわけです。一般的には、エントロピーは「不確定性、乱雑さ、無秩序の度合い」などと言い換えられています。よって、「秩序ある状態は、常に乱雑さの度合いが増大し、無秩序へと向かう」ということになります。このことにより、エントロピーの法則は熱力学以外にも適用されることになります。
例えば、紙にインクを一滴たらしたとします。するとインクは紙に染み込んで広がって行き、紙と一体となります。そして、インクが紙から分離して浮き上がってくることはありません。また、絨毯の上に牛乳をこぼしたとします。こぼれた牛乳は絨毯に染み込んで、二度と元へは返りません。このような例ではエントロピーが増大しているのです。
しかし、エントロピーの法則は「起こってしまったら元へと戻らない」ことを言うのではありません。「形あるものいつかは壊れる」ということは、経験的に誰でも知っています。例えば、床に落として割れた花瓶は元へは戻りません。この場合、花瓶という意味のあるものが粉々に割れて、ただの陶器のかけらになって散らばってしまったわけですから、エントロピーは増大しています。しかし、この場合、割れた花瓶には床に落ちるまでに重力が加わっており、花瓶は閉鎖系ではないのです。よって、厳密には、エントロピーの法則は適用できないのです。