あなたはある組織のトップです。その組織で一つのプロジェクトを行うことになりました。そこでプロジェクトのテーマを決めなければならないのですが、あなたの中ではすでにテーマは決まっています。でも、あなたは組織の中で独裁的な立場になることをとても恐れています。それは、スタッフから反感を買い、自分が孤立することを恐れているからです。だから、あなたは組織の中で決め事をする時には必ずみんなで話し合いを持つことにしています。その話し合いでは、あなたは積極的には自分の意見を言わないようにしています。それは、一見、スタッフの意見を広く聞くためのように思え、自分もそう思い込んでいますが、実は、あなたは自分の意見として言ったことに対して、スタッフから否定的な意見が出ることに我慢ができないのです。それであなたは、スタッフの意見を批評する立場にいようとします。すなわち“ご意見番”です。自分の考えに近い意見には肯定的に、自分の考えと違う意見には否定的に、もっともらしい理由をつけて批評します。例えば、「お客様の気持ちを考えると、○○したほうがいいね。」「見ている側からすると、△△でしょう。」などと、本当は自分の主観的な意見なのにそれを隠し、あたかも一般的な正論であるかの如く装って言うのです。意見を言うたびに否定的に批評されればだんだん意見する気力が失せてきます。そして、そのうちスタッフはあなたに迎合するような意見を言うようになってきます。このようにして陰に日向に話し合いを誘導して、最終的にあなたは自分の思う通りにしてしまうのです。しかも、自分の意見は言わず、みんなで話し合った結果そうなったという形にして。このような話し合いはうわべだけ見ると自由で民主的な話し合いに見えます。あなたはそのことによって、自分は民主的な“いい人”だと思い込んで満足するのです。