2005/6/7 uploaded
ユング心理学には、共時性に関連して、もう一つ触れておかなければならない大事な概念があります。それは『自己(self)』です。自己という言葉は日常でも使われますが、ユングが説いた『自己』という概念はそのような日常語としての意味合いとは異なる為、人によっては大変理解しにくいものと思います。
『自己(self)』は、『人間の意識も無意識も含めた心全体の統合の中心』と説明されています。通常、私たちが「私は私」と思っている意識は、心理学用語で『自我(ego)』と言います。第三章前編で「知・情・意」の三要素に分けてお話しした「心」とは、実はこの『自我』のことだったのです。しかし、フロイトによる無意識(潜在意識)の発見により、自我が心のすべてではないことが明らかになりました。無意識(潜在意識)に対して言えば、自我とは“顕在意識”であり、無意識(潜在意識)をも含めた心全体の一部分なのです。よって、自我が心全体を統合できるはずがありません。そこでユングは、心の中心にあって、心全体を統合している存在として『自己』という概念を考え出したのです。