この例からもおわかりになるかも知れませんが、ユングがなぜ『自己』という概念を考え出したかは、先にお話しした『共時性』と関係があります。つまり、自我からは何の因果関係も見出せない『意味のある偶然』、その背後にある『共時性』を支配している存在として『自己』を仮定したのです。これは見方を変えると、『意味のある偶然』とは、『自己』が何らかの意図を持って仕組んだ(アレンジした)、自我への“働きかけ”と捉えることができます。
ここまではっきり言ってしまうと、「なにバカな事言ってるんだ。」とか「ちょっと頭がおかしいんじゃないか。」とか「なんかかぶれてるんじゃないの。」というような反応があってもごもっともだと思います。ユングの『共時性』や『自己』の概念は、唯物論にどっぷり浸かっている現代日本人には、理解が難しいと言うより、理解ができても受け入れることが難しいのではないかと思います。実際、ユング心理学をオカルトだとかトンデモだとかと言う人はいるようです。