そんな私が中学に入学しました。中学校は小学校とは違い、何だか未知の世界に飛び込んだ感じがしていました。当時、私の町の中学校は校舎が新しくなってまもない時期でもあり、とても新鮮なすがすがしい気分でいたことを覚えています。そんな気分の中で私は、校舎の3階にある教室の窓から見えるある建物が気になっていました。それは、遠くの小高い山(実際は台地です。)の上に建っている真っ白な建物でした。当時の私は視力が2.0でしたので、その建物の窓まで見えました。自分がすがすがしい気分でいたからでしょうか、その建物の白さがとても印象的で周囲から浮いているようにさえ見えました。新しい体育館ができて、遮られて見えなくなるまでの数ヶ月間、「あの建物は一体何なんだろう?」と毎日見ているうちに、私は、いつの間にかその建物に惹かれてしまい、「あそこへ行ってみたい。」と思うようになりました。

 やがて、その建物が何なのかを知る時が来ました。それは新設された医科大学の建物だったのです。小学5年生の時、近くに医大ができるという話を耳にしたことはありましたが、ただの噂話で、本当にできるとは思っていませんでしたから、私は忘れていたのです。ずっと気になっていた建物が医大の建物だということを知った時、私の中から野口英世の伝記を読んだ時の記憶がよみがえってきました。そして、野口英世への憧れと、真新しい純白の建物への憧れとが一緒になり、その時初めて、「医者になりたい。」と思ったのです。

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